2022年8月定例会

日時:2022年8月13日
場所:新橋 港区生涯学習センター
議題:①吉澤氏:「不毛の原子力論議から訣別するための『総合知学的』アプローチ(提言)」(途中稿)
②荻林氏:「岸田内閣の新しい資本主義」―成長と分配
日本経済停滞の原因と復活の条件について」
1.2022年のロシアによるウクライナ侵攻及び地球温暖化対応として「2050年に向けたカーボンニュートラルを目指す」との岸田首相の発言に対して、現在、脱炭素社会実現までにあと30年しか無いにもかかわらず具体的で真剣な議論がなされていない。さらに「第6次エネルギー基本計画」(2021年10月)において、「あらゆる選択の可能性を追求する」といいながら具体的なエネルギー戦略を提示していない。特に基幹エネルギーが原子力エネルギーであることが明白であるにもかかわらず、原子力エネルギーの再活用について、し新聞報道、TV報道、国会質疑、原子力関係学会、エネルギー政策関連機関等においても本格的な議論がされていない。
*菅内閣総理大臣は2020年10月26日の所信表明演説において、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。加えて、2021年4月、地球温暖化対策推進本部及び米国主催の気候サミットにおいて、「2030年度に、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに50%の高みに向けて、挑戦を続けていく」ことを表明しました。
**岸田首相は、菅前首相の2020年10月の演説を受けて、2021年10月14日に「・・・2030年マイナス46%、さらには、2050年カーボンニュートラル、この目標はしっかりと堅持をいたします。・・・」と表明した。
***同じく2021年10月31日-11月12日開催のグラスゴーで開催された「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」で「国際的な約束」をしてしまった。
2)皮相的不毛に映る原子力論議を克服し、『総合知学的』にアプローチする方式に転換することが必要である。
現状では、新聞報道、TV報道での原子力論議が難しいと受け取られている。その原因として、原子力問題を正しく理解する学識や知見が不足しており,本質を保管して理解する能力が無いためである。
又、この意味で、電子力案件訴訟でも法律家(裁判官、弁護士等)は文面での判断しか出来なく、真の論議は出来ない。
この点で、報道に関わる者、政策形成に関わる者、政策決定・水深に関わる者、が
原子力発電についての十分な知見が乏しい事にある。原子力技術(設計、建設、運転、維持管理、廃炉、放射性物質の発生・管理・処分の技術等)を理解し、知識を共有し、さらに社会的な影響、経済性(あらゆるコストを盛り込む)、人間・文化・安全の面での理解の共有が必要である。
3)21世紀社会における皮相的不毛に陥る要因を見直す必要がある。余りに細分化された専攻分野となってきている問題、これを総合知化することの重要性を認識すべきでは無いか。
 総合知学的アプローチをすべく、人材育成が急務では無いか。
4)特にエネルギー政策分野において、なかんずく原子力発電分野で『チーム原子力総合知(仮称)』を集結すべきでは無いか。
コメント:(神出)本発表では、原子力の利用が前提という風に読み取れるが、もっと全体的なエネルギー政策での総合知的な議論や検討をするような文脈に出来ないか。
(神出)日本の再生可能エネルギー(ポテンシャル)は(地域差はあるが)非常に大きいと聞いているが、なぜ原子力エネルギーにこだわるのか。コストでも原子力は、廃炉や廃棄物処理まで加えると非常に膨大、高額となるのでは無いか。
この点も含めて、議論していかなければならないのでは無いか。
状態では日本経済の将来展望は悲観的とならざるを得ない。
2.「岸田内閣の新しい資本主義」―成長と分配 日本経済停滞の原因と復活の条件について」
岸田内閣の新しい資本主義についてはその内容が今持ってつかめない。
この中にあって、日本が30年も経済整体している原因をGDPと国債発行残高の増加とその国債収益が多くは、企業へ財政投資や補助金(Firm Subsidy)が大きく、それが企業に流れ、そして次の投資に回されず内部留保に回ってしまっているという、いわば大きな無駄が生じているのでは無いか。との観点から論じてみる。
 経済理論(マクロ経済)から見て、ケインズの言う、<有効需要の創出において、民間・個人での貯蓄が全て何らかの投資(物的、人的)に向かえば、例えば投資が不足する所に、財政投資で補って行けば、乗数効果が働いて、好循環が生まれる>という事を前提としていた。しかし、1990年台以降、投資が民間貯蓄より少なく、さらに企業が投資では無く、貯蓄を進めてくると言う事態が長期に定着すると、もはや経済は成長しなくなってきた。
これに対して、旧来の経済活性化、民間投資の誘発のための政府による補助金等を赤字国債を発行して推進したが、企業側では、バブル崩壊後の自社の財務体質健全化に邁進し、借入金をへらし、さらには内部留保をため込み、投資しない体質となった。(この裏には、物が売れない、売れる製品が出来ない<このため既存製品で売り上げを確保する>という体質に変わってしまった。政府からの補助金、投資誘発の財政出動も投資には向かわなかった。国債をいくら発行して、補助金を付けても、単に企業の財務体質改善にしか使われなかった。(低金利政策は、政府にとって、国債の利払いが少なくなるため、赤字国債の発行に歯止めが効かなくなってきた。産業界は、経済浮揚のためと称して、公共投資やより直接的な補助金の獲得に励んで、自前の資金(内部留保)を新たな研究開発や設備更新、新たな設備投資に向かわせなかった。
コロナ発生前の2019年9月(令和元年)段階での経済学者及び識者による日本経済浮上と生産性の向上のための識者の意見においてもすでに日本型(昭和な職場)の改革が提案されていたが雇用維持と高齢者の年功序列賃金体系<高賃金>(若者が冷遇され続けた)が是正されず、デジタル化、グローバル化に対応する人材の確保が出来なかった。
これによる生産性の低下が引き続いた。(現在もこの傾向にある)
給与で見れば、労働生産性と給与は有り程度比例しているが、産業毎の格差が大きく、情報通信業と小売業との差は開いてきている。(但し、生産性が上がっている産業でも労働分配率は下がってきている。

 新規国債60兆円規模で毎年発行しているにもかかわらずGDPの延びが無いのは何を意味するかという点では、公共投資乗数がO又は1以下であることを意味し、売り上げが増加していない事は、本来の企業活動での売り上げが減っている一方で、政府よりの資金が(補助金や政府よりの公共投資額でまかなわれている)売り上げを下支えしていることを意味している。
このため、企業の投資欲の停滞、国際競争力の低下、ゾンビ企業の生き残りを生み、産業構造の転換は、生産性向上がなされない状況を生み出している。
此処には少なからず政府の無駄遣い<非効率的な資金配分>が行われてきている。
<裏には、選挙で集票としてのばらまきが必要悪としてより大きな意味を持ってきている。最近は、コロナ禍対策での持続化給付事業などにもある>(此処では電通丸投げもある)
これに対して、旧来の経済活性化、民間投資の誘発のため、補助金等を赤字国債を発行してまで推進したが、企業側では、バブル崩壊後の自社の財務体質健全化に邁進し、借入金をへらし、さらには内部留保をため込み、投資しない退出となった。(この裏には、物が売れない、売れる製品が出来ない<既存製品で売り上げを確保する>という体質に変わってしまった。政府からの補助金、投資誘発の財政出動も投資には向かわなかった。 国債をいくら発行して、補助金を付けても、単に企業の財務体質改善にしか使われなかった。

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