会長挨拶

総合知学会会長ご挨拶
                                                                     神出瑞穂
21世紀に入って20年が経過しました。
AI&DX時代、生命科学の時代、カーボンゼロ環境の時代などの言葉が連日、目に飛び込んで来ます。
一見、新しい時代の幕開けのような錯覚を覚えますが、20世紀から、さらには18世紀の産業革命以来変化していない「文明の性格」があります。
それは新しい科学技術で人間の欲望を次々と満たしてゆくことを「善し」とする歴史観をもった文明すなわち「科学技術文明」です。
20世紀末に世界中でこの文明の功罪が評価されました。その結果は「功罪相半ば」でした。科学技術により物質的生活水準はそれなりに向上しましたが、同時に2つの世界戦争で多くの生命が奪われ、環境問題も深刻化しました。
この評価の結果、世界の識者からは次のような警告が発せられました。
① 科学技術は人間の欲望の限りないエスカレートに貢献しているが、このままではたして21世紀の世界は良いのか?
② 人類は科学技術に頼らざるを得ないが、果たしてこのまま進んで利益が実害を上回りえるか?
これは21世紀の我々への宿題として残り、国民の権利と責任、生き方、少子高齢化問題、資本主義経済と働き方、科学技術政策、国の進むべき方向などの諸問題の背景として潜在的に横たわっています。
総合知学会ではこの様な問題意識を持ちながら具体的課題について多面的に研究し、その結果を論文化と提言の形で世に問います。学会ホームページは老壮青の一般の方々や専門家とのオープンな意見交換の場であります。

“哲学は若い内にやるべきではない“―これは日本哲学学会のある会長の言葉ですが、総合知も似た処があります。総合知的な知見は人生劇場第二幕、官産学の各分野でそれなりの経験を積んだ人間に備わる智恵でありましょう。
定年を迎え、初めて自由に、広く課題を捉え、考えることが可能になります。したがって総合知学会には”現役“の方もいますが結果として“人生劇場第三幕”を迎えた会員が多くなります。逆に言えば第三幕を迎えた方は、どなたでも総合知学会入会の資格を有することになります。
これまでのご経験をバックにして一種の社会貢献活動で“一隅を照らしたい”と思われる方は、当学会ホームページの会員自己紹介や過去の学会誌内容などご一読いただきご判断のうえ、ご参加を期待いたします。